- 設計事務所に家づくりを依頼するのに適しているのはどんな人?
今日の記事はこういった疑問に答えます。
結論から言うと、自由、変形地、時間、見積り比較の4つがポイントです。
- 設計事務所での家づくりに向いている人の特徴4選
- 自分がどこに家づくりを頼めばいいかを考える手順
私は2018年12月に平屋を新築しました。
設計事務所に依頼して平屋を建てたのですが、設計事務所ならではの楽しさと苦労を味わいました。
今日の記事は私が実際に設計事務所に依頼して家を建てた経験から、設計事務所での家づくりに向いているのはどんな人なのか考えてみました。
設計事務所での家づくりに興味がある、あるいは自分がどこに家づくりを頼めば成功するかわからないと悩んでいるかたは必見です。
設計事務所での家づくりに向いている人の特徴4選
以下の4つがポイントです。
- すべてオリジナルで決めたい人(自分で決める労力をかけられる人)
- 変形地に家を建てようとしている人
- 時間がかかっても問題ない人
- 見積りを比較したい人
(1)すべてオリジナルで決めたい人(自分で決める労力をかけられる人)
まずはなんといってもこれに尽きます。
設計事務所で家を建てる最大のメリット、それは完全な自由設計が可能になるということです。
本当にありとあらゆることを、建築士さんと相談しながら、自由に決めることができます。
(注意:もちろん予算による制限はあります)
組み合わせは無限です。
多くのハウスメーカーでは選択できる組み合わせがある程度決まっている下記のことも、設計事務所であれば基本的に自由です。
- 工法
- 外壁、壁紙、床の素材
- 窓・サッチの種類、メーカー
- 断熱材の種類
- キッチン、バスルーム、トイレ、家具類のメーカー(造作も可)
- 空調の種類
キッチンやバスルームなどは既存メーカーから選択することもできますし、造作で世界にひとつのものを作ることも可能です。
建築士さんのおすすめを聞きながら、ひとつひとつの要素について、メリット、デメリットを比較検討しつつ、自分達にとって最適なものをチョイスできます。
当ブログの各記事をお読みいただければ、あらゆる要素を自由に決めていることがおわかりいただけると思います。
実際に私達も最初はハウスメーカーで話を聞いていましたが、自由度の低さがどうしても自分達の家づくりのコンセプト実現の障壁になると感じて、設計事務所に依頼した経緯があります。
そのあたりについては下記記事にまとめてあります。
自分達ですべてを選択して納得して決めたい! というこだわりの強いかたにとっては設計事務所はまさにベストな選択です。
予算についても、設計事務所=高いといったイメージがあるかも知れませんが、実はそんなことはありません。
仕様のグレードアップだけでなく、あえて仕様を落としてコストを抑えるといった選択も、もちろん可能です。
コストを抑える場所すら、自分達で決めることができます。
予算を提示しておけば、その予算内で実現できる最適な組み合わせを、あらゆる材料を対象に、建築士さんと相談しながら検討することが可能です。
ただし、すべて自分達で決められるということは、逆に言うと、自分達で決めなくてはならない、ということでもあります。
決まったメニューから選択するわけではないので、当然自分達で選びとる力、考える労力が必要になってきます。
建築に対する勉強もより深く行わなければならないでしょう。
建物を建てる土地のカタチや風土と、自分達の今とこれからの生活に最適な家はどんなものなのか。
建築士さんと一緒に、あらゆるケースの最適解をそれこそ脳みそに汗をかきながら決められる人でなければ、うまくいかない可能性が高い。
自分達のこだわり、コンセプトを実現するためなら労力もいとわない、という人でなければ、あまりの決め事の多さに後悔することになります。
(2)変形地に家を建てようとしている人
2つめは土地の話です。
通常は建築が難しい変形地こそ、設計事務所の腕の見せ所になります。
私が家を建てた土地も、決してキレイな形ではありませんでした。
お隣さんの駐車場が土地の一部にあるため、変形のL字のようなかたちの土地でした。
しかし、変形した土地の中でも長所はありますので、その長所を生かす建物の配置を考えていただきました。
実際にはLDKに対して、寝室などのプライベートスペースは斜めにつながっています。たぶん普通のハウスメーカーであれば敬遠するような建物のかたちです。
また、西側の眺めが良いため、その眺めを活かすためのLDKの配置、窓の作りになっていたりします。
このあたりの設計のきめ細かさについては、設計事務所ならではの利点です。
通常、土地は正方形や長方形が一番高価です。
三角形や旗竿地になれば値段は下がる傾向にあります。
あとは接道の影響も大きく、陽当たりのいい南道路が値段が高く、北道路が値段が安いことが一般的でしょう。
例えばですが、土地探しから始めなくてはならず、土地の費用がかかるぶん、建物にかけられる予算が少ないといったケースはよくあります。
そんな場合にも、値段の安い変形地をあえて購入し、土地の費用を抑えつつ、設計事務所に依頼して、その土地の特性を生かした家づくりをしてもらう、なんてこともおもしろい取り組みですね。
ハウスメーカーでは対応できないような難しい土地も、設計事務所であれば自由自在にプランを組めるため、その土地の特性を生かした最大限に住みやすい建物を設計してくれる可能性が高いです。
平坦、陽当たり良し、南道路、100坪以上、正方形といった超理想的な土地に家を建てるのであれば、どこに頼んでもそれほど差は出ないと思います。
逆に、勾配あり、陽当たり限定的、北道路、30坪、旗竿地のうえに細長い、といった超難しい土地の場合、ハウスメーカーなどは自社に適したプランがなく敬遠すると思いますが、設計事務所の建築士さんの場合は逆に燃えると思うのです。
一見めんどくさそう、いい家なんてできなそう、といった土地に、熱意とアイディアで素晴らしい家を建ててもらえる可能性が高いのが設計事務所です。
我が家のように変形地に家を建てるのであれば、設計事務所に頼むこともひとつの選択です。
思いもよらなかった素晴らしい家が建つ可能性は十分にあります。
(3)時間がかかっても問題ない人
設計事務所に依頼する場合のデメリットとしては、竣工までの時間が長いということです。
前述したようにオリジナルですべて決めていくため、どうしても設計に時間がかかります。
また、ハウスメーカーは基本的に決まった工法や部材の組み合わせで建てるため、あらゆることが効率化優先で規格化されている場合が多いです。
そのため工事のスピードも速いです。
設計事務所の場合は、決まった工法や部材ではなく規格化もされていない(できない)ため、工事の手間はどうしても増えます。
工期も長めです。
実際我が家は、設計の打ち合わせに1年、工事が7か月近くかかりました。
ですので、検討開始から半年後には新居に住んでいたい!といった要望はおそらく通りません。
たぶん設計事務所側から断られます。
また、設計事務所は建築士さん1名のことが多く、同時に設計、監理を行える数には限界があります。
すでに別のかたの設計を受注している場合には、自分達が依頼してもすぐに設計を開始してもらえるとは限りません。
また著名で人気の建築士さんの場合は、バックオーダーをたくさん抱えているため、よほどのコネでもない限りは1~2年待つなんてよくあることです。
実際に私が話を聞いた何名かの建築士さんも、今抱えている案件で手いっぱいのため、設計開始まで半年~1年待ってほしいと言われたケースがありました。
中には、「ありがたいことに、たくさん問い合わせをいただくが、とても受けきれないため今はすべてお断りしている」という建築士さんもいました。
(4)見積りを比較したい人
設計事務所がハウスメーカーや工務店と一番違うところは、設計監理を行う人(設計事務所の建築士さん)と、実際に家を建てる施工業者が別れているということです。
設計事務所での設計が完了すると、複数の工務店さんに工事費の見積りを依頼してくれます。
公平性を保つために、一般的には最低でも3社に見積りを出すことが多いようです。
私がお願いした設計事務所さんも技術力や実績の確かな3社に見積りを出して、一番安い会社をご提案しますとのことでした。
全く同じ設計や材料で見積りをお願いしているのに、3社の見積り金額が数百万単位で変わってくることは珍しくありません。
工務店さんごとに、例えば仕入れのルートが違ったりするので、得意不得意は当然出ます。
材料費ひとつとってみても高い安いがはっきり分かれるのです。
さらに、相見積りになりますので、単純に競争の原理が働く効果も大きいです。
競合他社がいれば、交渉次第では値引きを最大限まで引き出せることになります。
ハウスメーカーであれば、基本的にはそこで建てると決めた場合には、そのハウスメーカー1社の見積り金額で納得するしかありません。
値引きを迫るにしても競合がいないためおのずと限界があるでしょう。
また、契約の関係から、最終見積りの段階でやっぱりやめたということもできません。
その点、設計事務所であれば、まったく同じ条件で複数の工務店の見積りを比較することができます。
設計事務所に依頼すると、設計監査料として建築費の10~15%を支払うのが一般的です。
10%だった場合、3000万円の家であれば、別途300万円を設計事務所に支払う必要があります。
10%は決して少ない金額ではないのですが、見積りを公平に比較できることを考えると、ハウスメーカーで同等の家を建てるよりも設計事務所のほうが結果的に総額を抑えられる可能性は十分にあります。
別の観点から見ると、ハウスメーカーや工務店に依頼した場合は、設計監理を行う人と、施工者は基本的に同じ会社の人になります。
設計監理を行う人と、施工の担当者が同じ会社組織の中にいるということですから、いわば全部身内というわけです。
身内ですから、利害関係も一緒のため、施主側の都合ではなく、ハウスメーカー側の都合が優先される可能性は否定できません。
3000万円の見積りの家を建てる場合を考えると、ハウスメーカー側は3000万円の中からさらに利益を出すためにはどうすればいいかを考えます。
客観的にみた場合、施主の利益よりも、自社の利益を優先しやすい構造です。
それとは逆に、設計事務所の場合は施主側、オーナー側の立場となりますので、3000万円の家を発注した場合には、3000万円の価値がきっちり出るように工務店に働きかけます。
ハウスメーカーとは真逆の立場になることがおわかりいただけるでしょう。
どこに家づくりを頼めばいいかを考える手順
設計事務所に向いている人の特徴4選は、裏返すとそのまま設計事務所に向かない人4選になります。
設計事務所に向かない人4選
- 家づくりになるべく労力をかけたくない
- 土地の特性に合わせた家づくりを考えていない
- すぐに(半年以内に)新居に住みたい
- 家づくりを依頼した1社を信頼したい(建築費用も含めて)
上記のようなかたは、たぶんですが、設計事務所を選択すると失敗します。
ハウスメーカー、工務店、設計事務所には、それぞれにメリット・デメリットが存在します。
今日の記事の内容についても、あくまで設計事務所に向いているであろう人の特徴を並べただけで、設計事務所が絶対に優れているということでは決してありません。
上記した4つの「設計事務所に向かない人」の条件をひとつでも満たすなら、ハウスメーカーか工務店を選んだほうがいいです。
設計事務所に、決して安くはない設計監理費(建築費用の10~15%)をあえて支払う意味がないからです。
どこに家づくりを頼めば正解か
結局のところ、家づくりはどこに頼めば正解ということはありません。
どこに頼めば一番安く建てられるのかということですら、これといった正解がないのが現実です。例えば超大手の高級ハウスメーカーは避けたほうがいいかな、ぐらいしかアイディアはありません。
ですので、外に正解を求めるのではなく、自分達がどんなスタンスで家づくりに臨むのかが唯一のよりどころとなります。
理想の家のイメージ、コンセプトがないとスタートラインにすら立てていないと考えるべきです。
私達夫婦もハウスメーカー巡りから始めましたが、理想の家のコンセプトが決まってから、自分達には設計事務所が適していると気付きました。
これから家づくりを考えているかたは、まずは自分達の理想とする家のイメージ、コンセプト作りからスタートしてください。
要望をノートにまとめてみるのも有効な手順です。
そして、理想の家をイメージするには、情報を集めて、家づくりの知識を増やすステップがどうしても必要となります。
知らないことには、あたりまえですが、何が自分達に必要なのかを正しく判断できないからです。
まずはカタログや資料を集めて、家づくりの脱初心者を目指してください。
家づくりを検討するための知識が十分につき、理想の家のイメージ、コンセプトが固まった段階で、初めて、自分達の理想の家づくりをかなえてくれるのはどこだろう?と考えるのが正しい順序です。
情報を集めて検討したうで、自分達のやりたいことがハウスメーカーや工務店では実現できそうにない、といった場合には設計事務所を探してみるのもいいでしょう。
安くはない設計監理料を払うのは、ハウスメーカーや工務店ではどうしても無理、となってからでも決して遅くはないのです。
私達と同じように設計事務所を検討する可能性がでてきた際には、下記記事をご参照ください。
【まとめ】設計事務所は家づくりの最後の選択肢です
今日の記事をまとめます。
- 家づくりのすべての要素を自分達で決めたい、といったかたは設計事務所が適していると言えます。完全自由設計のため、予算が許す限り、制約はありません。
ただし、自由ということは、それだけ決める労力もかかることになります。
建築士さんとともに、細かい部分までこだわって決める意思のあるかたでないと、手間を負担と感じて後悔する可能性もあります。 - 変形地の家づくりは設計事務所の得意とするところです。
我が家のように変わった形の土地でも、その土地の特性を生かした家づくりを行ってくれます。一見短所と思っていた箇所が、切り口をかえると一転して長所になることもあるでしょう。
あえて変形地の安い土地を買って費用を抑えて、抑えた分を建物にまわすなんてことも設計事務所であれば有力な選択肢のひとつです。 - ハウスメーカーのように規格化されていないので、設計事務所での家づくりは時間がかかることを覚悟しましょう。
すぐに新居に住みたいかたには不向きです。 - 設計事務所は自分達で施工は行いません。施工は工務店に依頼します。
そのため、工務店に対しては、設計事務所は施主側の立場で交渉してくれるということです。
工事費は3社以上に見積りを依頼して、施主に有利な条件を引き出してくれます。
また、立場上、設計や施工でさらなる利益を出すための工夫をする必要性がないため、適正な価格で信頼できる工事が行われているかどうか、施主側の立場で厳しくチェックしてくれます。 - 家づくりに正解はありません。
外に正解を求めるよりも、自分達のイメージ、コンセプトを大切にしましょう。
情報を集めて知識を蓄え、理想の家のイメージ、コンセプトができたあと、自分達の理想の家づくりをかなえてくれるのはどこだろうか? と考えるのが正しい順序です。
私達は設計事務所で家を建てましたが、本記事にも書いたとおり、自由設計のメリットがある反面、万人にすすめられるとは言えない面も多々あります。
大切なのは、あらゆる選択肢をテーブルに広げて、可能性を検討し、そのうえで自分達にとっての最適解を探すことです。
家づくりだけに限らず、万事に共通する失敗しないための考え方ではないでしょうか。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
みなさんの家づくりの参考になれば幸いです。
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